明日香村
法隆寺を後にした私は、明日香村へと向かった。
甘樫丘(あまかしのおか)を右に見ながら車を進めるうちに、少しずつ鼓動が高鳴るのを感じた。
これから、何事が始まるのだろうかとの期待と、それに応えられるのだろうかとの不安とが交錯する思いがしていた。
明日香村の自然あふれる景色は、とても懐かしい、暖かいものを感じた。
まるでふるさとへ帰ってきた感じさえ思える。
その心に感じる懐かしさに念いを集中させると、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の姿が浮かんできて、語ってくれた。
「ここは私にとって、第二のふるさとであると言っても過言ではない。ここの素朴な心根が大好きであり、心落ち着く場所である。心地よいこの地の風土は、誰をも優しく迎え入れることのできるところである。そのことを今思っていた」と
瓊瓊杵尊は、全国を平定する時、ここを第二のふるさととして活躍されていたのだと、心で受け取ることができた。
そして、御女麗(みめうるわ)しい木花咲耶姫(このはなさくやひめ)様のお姿が、尊の陰に隠れて見えた。
しかし、私を呼んでる方は、また違う方だと伝わってくる。
さらに「一晩この地に泊まり、ここの空気になれ。心を整えて来るがよい」と伝わってくるのを感じ取った。
誰だろう、誰だろう?と心は騒ぐが、ゆっくり宿に泊まることとし、いよいよ明日、その方と出会うことになると、妙に確信している自分がいた。

(初出:2020年7月19日)

