櫛稲田姫(クシナダヒメ)様のお言葉(
愛の光ということについて、お話をしてみたいと思います。
私は、幼少の頃より、随分と恵まれた環境で育ち、
両親にも恵まれ、楽しい毎日を過ごしていました。
そこにはすでに両親の愛の思いが、たくさん詰まっていたのでございます。
日々の何げない生活の中で、
ごくごく当たり前と思っておりましたことが、
実はたくさん与えられていたのだということを、
思い至るまでに随分と時間がかかりました。
光というのは、いつもそこにあれば、特別何も感じず。
明るくて、よく周りが見えて、当たり前のことだと思っておりました。
ところが、このことに改めて気づかされる出来事がございました。
私は長じて、姫として一人前になる頃のことでございます。
その当時、毎年のようにやって来る、
あの見るも恐ろしい八岐大蛇(ヤマタノオロチ)が、
今年は私を、生贄に差し出せと申して来たのでございます。
私の両親は、それはもう悲しげな思いに打ちひしがれ、
すでにもう、幾人もの娘達を大蛇(オロチ)の生贄に取られていたのでありました。
私も今回ばかりは、もう助かる見込みはないと、
覚悟せねばならぬと、思っておりました。
そのようなことになって初めて、私は、
今までに与えられていた、当たり前の環境が、
いかにありがたいものであったか、
両親の愛がいかに幸せであったかを、
改めて感じることとなったのでございます。
そのような折に、我ら家族は
皆暗い思いで、日々を過ごしておりまた。
須佐之男尊様という御方に、救っていただくことができ、
尊様は見事、八岐大蛇を退治してしまわれたのであります。
そのことにより、私が生贄として差し出されねばならぬところを救われ、
九死に一生を得たのでございます。
その後私は、須佐之男尊様の妻となり、
幸せな日々を、送らせていただいたのでございます。
この時には、すでに与えられていた、ありがたい愛の光が、
一端消え失せるかに思えたところ、
また、その光、差し込むことがあり、
改めてそのありがたさを、感じたのでございます。
元々、当たり前のようにして、暮らしていたその中に、
すでに、そのありがたい光はあったのだということを、
命懸けの思いをして、初めて気がついたのでございます。
以来、私は、その尊き愛の光を、
すでに多く与えられているということを、
決して忘れねよう、心に刻み、
いつもそのことを、思って生きております。
そのことを、お教えくださった両親と、
生命を御救いくださった、須佐之男尊様に、
私は、生涯感謝申し上げ、
心より、尊敬申し上げております。
本当に大切なことを、お教えいただき、
誠にありがとうございました。
(初出:2013年5月30日/収録:2013年4月25日)

